初心者が聞いて分かりやすい、おすすめ落語を3演目ご紹介します。

時そば

「時そば」は古典落語の1つで、関西地区では「時うどん」として話される場合もあります。

お話の内容はそばの屋台で繰り広げられるそば屋の主人とお客との対話がベースです。落語の中でも有名なお話で5代目古今亭志ん生などが得意としており、そばの勘定をうまくごまかした男Aを目撃した男Bが、自分も同じように真似をして勘定をごまかそうと企てるのですが、なかなかうまくいかないことで笑いが生まれます。そばを実際食べているかのような音やしぐさを、扇子や手ぬぐいを使ったりしてどう演じるかがポイントです。

あらすじは冬の寒い夜、男Aがそば屋の屋台に入り、ちくわ入りのそばを注文します。その後男Aはそばをほめたり、割り箸をほめたり、いろいろなものをもち上げては褒め続けるのです。

食べ終わった頃に男Aは16文の料金を支払わなければいけないのですが、男Aはそば屋の主人に一文銭を1枚ずつ数えながら、1つずつ出していきます。「1(ひい)、2(ふう)、3(みい)、4(よう)、5(いつ)、6(むう)、7(なな)、8(やあ)」と途中まで数えたところで、「今何時だ」と男Aは時間を尋ねます。そば屋の主人が「へい、9(ここの)つでい」と言うと、男Aは「10(とう)、11、12、13、14、15、16」と続けて数え上げ、「ごちそうさま」と言ってすぐに屋台を出るのでした。

つまり、男Aは勘定の1文をうまくごまかしたのです。このやりとりをすべて見ていた別の男Bは、自分も同じように勘定をごまかそうと企てます。男Bは勘定をごまかそうとわざわざそば屋にやって来てきますがどうもうまくいきません。男Bは勘定を払おうとし、そば屋の主人に一文銭を1つずつ数え始めます。

「1、2、3、4、5、6、7、8」と数え、そして「今何時だ」と男Bは時間を尋ねると、そば屋の主人は「へい、4つでい」と言います。男Bは「5、6、7」と最後まで数え、勘定を余計に取られてしまうオチで話は終わります。

じゅげむ(寿限無)

「じゅげむ(寿限無)」も初心者にはおすすめの演目で、言葉遊びや早口言葉としても知られている古典的なお話です。

男Cに子供が生まれたのですが、男Cは親としてとにかく長生きできるよう長い名前をつけたいと言い出し、縁起の良い言葉ばかりを名前としてたくさん付けてしまいます。やがて子供はすくすく育ち腕白坊主になってしまい、近所の子供とケンカをしてしまい相手の子にコブを作ってしまいました。コブを作った子供は自分の父親と一緒にやってきて、男Cと口論になるのですが、口論の最中に子供の長い名前が繰り替えされる間に、子供のコブがなくなってしまったというオチです。

プロの落語家も最初にこのお話を師匠から稽古をつけられたという人も多くいます。お話自体は難しくないのですが、長い子供の名前をリズミカルに上手に言えるかや、会話の間をどうとるかで、おかしみが変わってくる高度な技術が要求されるお話でしょう。子供の名前は、「寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝る処に住む処、藪ら柑子の藪柑子、パイポパイポパイポのシューリンガン、 シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」という非常に長い名前です。

まんじゅうこわい

「まんじゅうこわい」は世間に広く知られているお話で、東京では3代目桂三木助や、上方では3代目桂米朝など多くの落語家が演じています。

あらすじは暇な街の男たちが数名集まって、それぞれ怖いものや嫌なものを言い合っていました。クモやヘビなどを各自言っていくのですが、「世の中に怖いものなどない」という男Dがいます。他の男たちが本当に怖いものがないのかと問い詰めると、男Dはしぶしぶ白状し小声で「まんじゅう」とつぶやきました。

男たちはその話を疑いますが、男Dはまんじゅうの話をしていると気分が悪くなると言って、隣の部屋で寝てしまいます。残った男たちは男Dをまんじゅう攻めして驚かしやろうといたずらを考え、たくさんまんじゅうを買い込んでくると、寝ている男Dの周りにどんどんまんじゅうを投げ込みました。

目覚めた男Dはまんじゅうを見て非常に驚き恐れますが、「こんな怖いものは食べてなくしてしまえ」と言ってまんじゅうを「怖い、怖い」と言いながら、全部食べてしまいます。覗いて見ていた男たちはやっと騙されたことに気付き「本当に何が怖いんだ」と男Dに聞くと、男Dは「お茶が1杯怖い」というオチになります。

上方では話の導入部に狐に化かされたという話にしたり、怪談話のように演じる方法があります。もともとは江戸時代に出版されたという笑話集の訳本がベースになっていると言われていて、良く似た話が宋代の随筆や明代の書籍にもあり、絵本や日本昔話としても多く出版されています。